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日露国籍問題-国籍確認訴訟から見えてくる国籍法11条1項の問題-

コメント#33-日本で生まれた日露カップルの子供の国籍問題について思う(2016年12月30日コメント)

 

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 元記事 ↑↑↑ を必ず参照してくださいね~。この元記事についていたコメントをそのまま転載したものです。右側の月別アーカイブ「2017」のところをクリックして日付順に読むと理解しやすいと思いますョ。

 

 今日は、控訴人側の控訴第1準備書面の内容についてちょっと触れてみようか。。。

 控訴人側では、今回、二人の研究者の意見を聞いたわけです。一人は国内でも屈指の国際私法・国際知的財産権法・国籍法の研究者で、国側もこの研究者の著書を証拠として引用したりする権威ある研究者だ。そして、控訴人の3人の弁護士がその研究者の意見を聴取した上で聞取報告書という形で纏めたものなのです。この時期、執筆中の著書が数冊あるような状態で、意見書という形で文書を作成するだけの時間的余裕が無かったようだ、そのため、代わりに控訴人の弁護士が聞取報告書を纏めるということになった。それでも大変忙しい中を、相当熱心に取り組んでくださったということだ。。。もう一人は、憲法・国籍法の研究者で、本件1審判決、そして、さらには判決に至る全ての書面を読み、証拠を検討した上で、この判決は見過ごすことが出来ないと、快く意見書の作成を引き受けてくださったという。。。

 控訴第1準備書面の内容はこれらの二人の研究者の意見を踏まえて、控訴理由書の主張を補充するという形で書かれているのです。

 それで、その問題の内容だが、国際私法・国際知的財産権法・国籍法の研究者の意見を大まか整理するとこのようになる。
 ① .国籍法11条の適用条件については、現代の日本の社会の状況に適合した新しい解釈が必要になると思われる。
 ② 国籍法11条が「自己の志望によって外国の国籍を取得した」日本国民が「日本国籍を失う」とした根拠は、通常、自己の志望により外国籍を取得する際には日本国籍を離脱する意思を伴うことが多く、それゆえ、国籍離脱の意思を擬制したものと考えるべきである。
 ③ 従って、本人の国籍離脱意思を擬制することが困難であるような特段の事情が存在する場合には、国籍法11条1項の適用を否定すべきである。

 ここで、「擬制」という言葉が使われているが、これは、つまり「みなす」ということだね。。。法律家が使う言葉はわかりにくくて困ることが多いが、一般の人が使う言葉に言い換えてしまえば、その文章の意味するところは簡単だ。。。

 そして、これらのような内容に整理される根拠などが詳しく説明されている。既存の裁判例なども引用されながら、従来の判決理由が「本人の申請が自由意志に基づき任意になされたかどうか」を判断しているかのように書かれているが、実質的に見れば「日本国籍離脱の意思を擬制する合理的基礎を欠く状況かどうか」を問題にしている。つまり、言い換えれば、外国国籍の取得に伴い、日本国籍を離脱する意志があるとみなすだけの合理的な基礎(状況、理由)があるかどうかが問題なのだ、と整理されているのだ。
 そしてもう一つ、国籍法11条1項の立法趣旨との関係で重要な視点が示されている。これは、国籍法11条1項の立法趣旨が言う重国籍防止原則とは、単純に国籍を単一にすべきだ、という趣旨ではなく、(現に居住していない国の国籍など)実効性の無い国籍の発生を避ける、という理念を背景にしてる。さらに、国籍法14条は未成年者の重国籍を明文で許容しているし、国籍法15条の催告が実際に行われた例は無いことからも、日本の国籍法は未成年者につき、成人ほど重国籍の防止を徹底しようとしているわけではない。と解説しているのだ。

 そして、これらの法律論をベースにして今回のケースを適用して考えると、「国籍法11条1項が適用されるべきではない例外的事例に当たる」と結論付けられている。

 それでは、もう一人の憲法・国籍法の研究者から見るとこの問題はどのように見えるのか?なんだが、、、これがまた説明すると長くなっちゃうんだな~。。。というわけで、これについては次回にしようか。。。

 いよいよ2016年もあと僅か。それでは、良いお年をお迎えください。。。